悲しみを告げる者
魔探偵ロキRAGNAROK
※漫画ではアングルボダ=アングルボザがスピカということになっています。成り代わりではなく、アニメの最終話前のお話で主人公はまた別のキャラだと認識してください。それが苦手な方はブラウザバックでお願いします。
嚥雀探偵事務所、と書かれた門を潜る。
隣には私とよく似た髪色や瞳、だけど顔つきも表情も性格も全然違う双子の姉の繭良。
それにしても………、懐かしい空気。
「ロキくーん」
ずかずかと慣れたように入って行った繭良を追う。
「やあ、繭良。……そちらは?」
繭良の後ろからひょっこり身体を出す。
すると見えた美しい顔の男の子。
小さなその男の子に見惚れる。
「この子?この子は私の双子の妹の名前!」
「大道寺名前です、よろしく」
自分の名前を言えば、ロキくんの綺麗な緑色の目が私を映す。
「そう。僕はこの事務所の探偵のロキだ。よろしく」
私に続いてロキくんが自己紹介してくれる。
綺麗な瞳、綺麗な顔立ち…。
そう思いながら、闇野さんに出されたお茶を飲む。
「それにしても、繭良とは似ても似つかない見た目だね」
静かに紅茶を飲み、繭良達の話題に入っていなかったが不意に出た自分の名前に振り向く。
「そうなの!名前ってば性格も全然違うの!」
正に不思議ミステリーと騒ぎ立てる繭良に苦笑い。
双子、とは言っても私と繭良は真の双子じゃない。
だから似ていなくても不思議じゃない。
──いつの間にかソファーで寝ていたようで慌てて起きる。
繭良は何処だろうと見回すも何処にも見当たらない。
そもそも何故寝てしまったのだろうか。
…昨日の夜更かしがそもそもの原因で、ロキくんと繭良が2人で何やら盛り上がってたから会話には入らずにぼーっとしていた。
それで気が付けば寝ていたという失態。
恐らくロキくんが掛けてくれたのであろうロキくんの上着を手に取る。
上着を上げれば微かに匂う懐かしく愛おしい匂い。
もしかして、そう思いながらもそれを綺麗に畳むと、家主を探して目線を動かす。
そんな時、がちゃりと扉が開いた。
そちらを見れば、ロキくんがいる。
「ああ、起きたんだ」
「うん、上着ありがとう。……繭良は?」
「塾に行くとかで帰ったよ。夜ご飯の時にまた来るらしいからそれまでここにいていいよ」
頷き、繭良の居場所について納得すると同時に、ロキに目を向ける。
こうやってきちんと見ると、やっぱり似ている。
「…ロキくんって、邪神ロキ?」
そう口にすればとたんに警戒される。
やっぱり、この姿じゃ分からないか。
私は元の姿に形を変える。
「その姿は、まさか、君はアングルボザなのかい?」
ロキの問いに頷く。
すると、神界に居た時よりも小さく子どもの姿にされたロキに抱き締められる。
「ごめんなさい、ロキ。私のせいで」
「違う、君のせいじゃない」
違うの、私のせいなのよ。
私はロキに抱きつきながら泣いた。
私のせいでロキも、子どもたちも追放されたようなもの。
何十分も泣き続け、ようやく落ち着き、私はロキと向き合う。
「大丈夫かい?」
「ええ、大丈夫よ。それより、ここに来る時子どもたちの気配がしたんだけど…あの子たちがいるの?」
そう尋ねれば、ロキが闇野さんを呼ぶ。
そして小さな黒い犬も。
闇野さんとわんちゃんは私を見るなり母さん、と言って涙を流す。
この子たちも私のように化けていたのねと納得すると同時に、2人を抱き締めた。
「ごめんなさい2人とも。寒くて暗くて、辛かったでしょう?本当にごめんなさい」
「いえ、母さんは悪くないですよ」
「そうだよ、マミィは悪くないよ」
ずっとずっと後悔していて、ようやく謝ることができた。
この子たちを生んですぐ、オーディンに連れて行かれてしまったことが大きな後悔だった。
この子たちにようやく会えて良かった。
まだ末娘のヘルには会えていないけれど…。
「ごめんなさい、ありがとう」
2人を抱き締めなおせば、私まですっぽり包むようにロキに抱き締められる。
暖かく懐かしい匂いに、自然と安堵する。
暫くそうして家族で抱き合い、満足すると離れて姿を偽りのものへと戻す。
「そうそう、ここにいるの時の私は名前で繭良の双子の妹だからよろしくね」
ぱちん、とウインク一つ。
そうすれば3人の暖かい笑顔が向けられた。
さて、繭良が塾が終わるまであと10分、ここに来るまであと少しの時間を家族との思い出話で花を咲かせようと思う。
▽悲しみを告げる者
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